アイオノマーのイオン会合体の高次構造とダイナミックスに関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11695047
• 研究機関: 名古屋工業大学
• 研究代表者: 辻田 義治 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (70016591)
• 研究分担者: 吉水 広明 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (10240350) ; 木下 隆利 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60135407)
• キーワード: アイオノマー / イオン会合体 / 高次構造 / エチレンマトリックス / ハイブリッド材料 / 分子運動性 / 小角X線散乱(SAXS) / 固体高分解能NMR

研究概要

アイオノマーは、酸基等を少量有する共重合体ポリマーを金属カチオン等で中和したものであり、ハイブリッド材料の一種である。ホストポリマーよりも力学特性などが向上するのは、アイオノマー中のイオン基のクーロン相互作用によるイオン会合体の形成に起因する。本研究ではCdイオンを用いてエチレンアイオノマーを調製し、これの高次構造とダイナミックス(分子運動性)に関する知見を、小角X線散乱や固体高分解能NMR法により得ることを目的とした。酸含量3.5及び5.4mol%のエチレン、メタクリル酸共重合体を酢酸カドミウムのエタノール溶液中に適当な温度で浸漬させて、種々のCd塩エチレンアイオノマーを調製した。全ての試料でイオン会合体に由来する小角X線散乱ピークが確認された。散乱プロフィールを解析した結果、中和度の増加に伴いイオン会合体サイズは大きくなっていた。DSC及び^<13>C DD/MAS NMR測定の結果から、中和度の増加に伴い大きくなったイオン会合体は、冷却過程でのエチレンマトリックス相の結晶化を制限していると考察された。固体^<113>Cd NMR測定を行ったところ、結晶化合物である酢酸カドミウム・二水和物と比較して、アイオノマーのピークは非常に幅広くに察されたので、イオン会合体のCdの配位構造は広い分布を持っていると推察される。また60から80℃にかけて^<113>Cd CP/MAS NMR測定ではピークが消失し、^<113>Cd DD/MAS NMR測定ではピークが明確に観測された。この結果から、イオン会合体は室温ではその運動性が低いがおよそ80℃以上になるとイオンが会合体といえども局所的な運動性が上昇することが確認された。

研究成果

• [文献書誌] Y. Tsujita, M. Yasuda, T. Kinoshita, A. Takizawa, H. Yoshimizu, G. R. Davies: "Structure Ionic Aggregates of Ionomers. II. Efect of Humidty and Temperature in Ethylene and Styrene Ionomers"J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys.. 40(印刷中). (2002)
• [文献書誌] H. Yoshimizu, Y. Tsujita: "Applications of NMR Spectroscopy to the Structure and Ionic Aggregates of Ionomers"Annual Report on NMR Spectroscopy. 44. 1-22 (2001)
• [文献書誌] Y. Tsujita, M. Yasuda, M. Takei, T. Kinoshita, A. Takizawa, H. Yoshimizu: "Structure of Ionic Aggegates of Ionomers. I. Variaton in the Structure of Ionic Aggregates with Different Acid Content Degree of Neutralization of Ethylene and Styrene Ionomers"Macromolecules. 34. 2220-2224 (2001)
• [文献書誌] 西野文悟, 斉藤淳志, 辻田義治, 吉水広明: "K塩エチレンアイオノマーの構造解析"高分子学会予稿集. 51(印刷中). (2002)
• [文献書誌] 杉浦寿史, 吉水広明, 辻田義治, 木下隆利: "Cd塩エチレンアイオノマーの^<113>Cd NMR"繊維学会予稿集. 56. 130-130 (2001)
• [文献書誌] 杉浦寿史, 吉水広明, 辻田義治, 木下隆利: "Cd塩エチレンアイオノマーのイオン会合体と力学物性"高分子学会予稿集. 50. 391-391 (2001)