研究概要 |
降雨による土壌侵食が問題となっているブラジル東北部の半乾燥地に設けた試験流域(スメ試験地)において,強雨時に測定された侵食流出土砂量の解析を行った.解析手法は,地面表面流をキネマティック・ウェーブ理論で計算する降雨流出・土壌侵食の物理モデル(WESPモデル)である.この物理モデルのパラメータの決定が本研究の主要な目的であり,本年は特に,地表が植生で被覆されているか否かが降雨流出・土壌侵食に及ぼす影響,および降雨の土壌への侵食特性と降雨終了後の土壌浸透能の回復メカニズムを検討することによって,それらに関係するモデルパラメータの評価法を提案した.すなわち,実測資料をもとに,植生の種類や繁茂の程度によって裸地の場合に比して土壌侵食量が全く異なることを示すとともに,一般的に植生のある場合の侵食流出土砂量は裸地の1/100以下となることなどを明らかにした.また,土壌侵食に直接関係する表面流の発生特性と降雨発生時の初期土壌水分特性との関係を現地の降雨と流出土砂量に関する実測データおよび室内実験によって検討した.その結果,無降雨日数と初期土壌水分を示すパラメータとの関係を示す式を提案することができた.また,この提案式はブラジル半乾燥地にのみ適用できるだけであることから,土壌特性を普遍的に示す特性量(粒径や,粘度など)とこの式の関係についても明らかにした.
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