反芻家畜における繊維消化促進とメタン生成抑制に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11695071
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 板橋 久雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (00280991)
• 研究分担者: 神田 修平 東京農工大学, 農学部, 助手 (20015118) ; 渡辺 元 東京農工大学, 農学部, 助教授 (90158626) ; 田谷 一善 東京農工大学, 農学部, 教授 (60092491)
• キーワード: ルーメン / メタン / フマル酸 / インヒビン / テストステロン / 牛 / シバヤギ / 卵胞刺激ホルモン

研究概要

(1)メタン生成の抑制では、中鎖脂肪酸(C8、C10、C12)、ユーカリ油およびヨードプロパンについて、サイクロデキストリン(CD)包接化合物を調製し、培養実験でそれらの添加効果を検討した。中鎖脂肪酸-CDの添加で、プロトゾアトゾア数は減少し、メタン生成は低下したが、その効果はC10>C12>C8の順であった。いずれの脂肪酸の場合でも、酢酸の比率は低下し、プロピオン酸の比率が増大し、水素生成の増加は認められなかった。ユーカリ油-CDの添加の場合もほぼ同様な効果が認められた。ヨードプロパン-CD添加では、メタン生成は著しく抑制されたが、水素生成も増加した。
次に、粗飼料+濃厚飼料給与の牛にフマル酸またはユーカリ油-CDを添加給与し、メタン抑制効果を調べた。フマル酸2%の添加により、ルーメン内のプロピオン酸の比率は増大したが、メタン抑制は5%にとどまった。ユーカリ油-CDの添加(3.5%)ではメタン抑制効果はほとんど認められなかった。
(2)これらの添加物が反芻家畜の繁殖機能に影響を及ぼすか否かを調べるために、若い成熟雄シバヤギを用い、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌調節について、インヒビンとテストステロンがどのように関与しているかを検討した。片側の精巣を除去したところ、血中テストステロン濃度は減少しないもののインヒビンは速やかに低下したと同時にFSH濃度が上昇した。後に残りの精巣を除去したところ、テストステロン、インヒビンとも速やかに減少し、同時にFSHと黄体形成ホルモン(LH)濃度が上昇した。両側の卵巣を除去した動物にテストステロンを投与したところ、LH分泌はほぼ完全に抑制されたが、FSH分泌に対する抑制は部分的であった。また、インヒビン抗血清を無処理の雄ヤギに投与するとLH分泌には変化なくFSH分泌の増加が見られた。結論として、インヒビンとテストステロンはともに卵胞刺激ホルモン分泌の調節に関与しているが、黄体形成ホルモン分泌の調節にはテストステロンが精巣からの主な調節因子であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] ErudeBayaru et al.,: "Effect of fumaric acid on methane production, rumen fermentation and Digestibility of cattle fed roughage alone"Animal Science Journal. 72,(2). 139-146 (2001)
• [文献書誌] Itabashi,H.,et al.,: "Effect of fumaric acid or bromochloromethane-CD on ruminal Methanogenesis in cattle"South Africa Journal of Animal Science. 29. 138-139 (1999)
• [文献書誌] Tajima,K.,et al.,: "Methane output and microorganisms composition in Holstein cattle Supplemented with bromochloromethane"Proc.of Japanese Society for Rumen Metabolism and Physiology. 11,(1). 23-26 (2000)
• [文献書誌] Arai,K.,et al.,: "Involvement of inhibin in the regulation of follicle-stimulating hormone Secretion in the young adult male Shiba goat"Journal of Andrology. 21,(4). 558-565 (2000)
• [文献書誌] Tohei,H.,et al.,: "Dynamic changes in plasma concentration of gonadotropins, inhibin, Estradiol-17beta and progesterone in cows with ultrasound-guided follicular Aspiration"Journal of Veterinary Medical Science. 63,(1). 45-50 (2001)
• [文献書誌] Itabashi, H., et al.,: "Methane output and rumen microbial composition by 16SrDNA analysis-Effect of bromochloromethane. In "Greenhouse Gases and Animal Agriculture"(Takahashi, J.et al., Eds.)"The University of Queensland, Gatton, Queensland, Australia. 106 (2000)