研究課題
日本海は氷期に一度淡水化し、それが一万年ほど前に再び海水になったと考えられている。そうなると、日本海を隔てて立地する日本と韓国には、日本海が海水になったときに取り残された淡水生物が生息している、またはそこからそれぞれの環境に応じて独自の進化を遂げ、それぞれの生態系を維持しているものと考えられる。そこで、両国の淡水域の生物群集を比較することによって、種の分化や生物多様性の保全についての知見を得ることを目的として調査・研究を行った。平成13年度には9月に韓国春川地域と東部の湖沼・河川を訪れ、枝角類、その他プランクトンや水草、およびトミヨ魚類の採集を行い、それについて種の同定、安定同位体比の解析、遺伝グループの解析等を行った。本調査で、淡水域に生息する枝角類では28種が韓国から採集された。この内3種は日本では未記録のものであった。調査を韓国以外の東アジア諸国に広げ、枝角類の分布の様子を解析する必要が指摘された。トミヨ属魚類について、日本、韓国、およびその周辺国で採集された個体について、アロザイムを用いた遺伝的な解析を行った。その結果、日本海を隔てて分布するエゾトミヨの汽水型が単一の集団に属するものであること、一方、これまで同一の遺伝的集団であると考えられてきた淡水型には2つの遺伝集団があることが明らかとなった。種により、またクローンにより、日本と韓国のあいだでの分布の様式が異なることがわかった。それぞれの国での種毎の分布の過程を考察していく必要がある。
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