研究課題
基盤研究(B)
日本海は氷期に一度淡水化し、それが一万年ほど前に再び海水になったと考えられている。そうなると、日本海を隔てて立地する日本と韓国には、日本海が海水になったときに取り残された淡水生物が生息している、またはそこからそれぞれの環境に応じて独自の進化を遂げ、それぞれの生態系を維持しているものと考えられる。そこで、両国の淡水域の生物群集を比較することによって、種の分化や生物多様性の保全についての知見を得ることを目的とした。淡水から汽水、海水まで広く分布するイソコツブムシを日本と韓国で採集し比較した。この属のものは、これまで日本からは15種が報告されており、一方韓国では8種の生息が知られていた。今回の調査で、本邦の日本海側の汽水域に分布する普通種キスイコツブムシは韓国東海岸の汽水には稀と推定され、一方、日本では淡水域に分布を広げているチョウセンコツブムシが韓国東海岸では汽水に分布するという興味深い結果が得られた。本研究プロジェクトの調査で、淡水域に生息する枝角類では28種が韓国から採集された。この内3種は日本では未記録のものであった。調査を韓国以外の東アジア諸国に広げ、枝角類の分布の様子を解析する必要が指摘された。トミヨ属魚類について、日本、韓国、およびその周辺国で採集された個体について、アロザイムを用いた遺伝的な解析を行った。その結果、日本海を隔てて分布するエゾトミヨの汽水型が単一の集団に属するものであること、一方、これまで同一の遺伝的集団であると考えられてきた淡水型には2つの遺伝集団があることが明らかとなった。種により、またクローンにより、日本と韓国のあいだでの分布の様式が異なることがわかった。それぞれの国での種毎の分布の過程を考察していく必要がある。
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