研究概要 |
本研究は作物が環境ストレス下においていかに作物が環境適応を行うかについて細胞レベルで代謝物質を計測することで作物の環境順化について生理学的に解明することを目指している。代謝物質の細胞レベルでの非破壊計測は現在開発中であり,計測法として超微量で分析が可能であるレーザーイオン化質量分析計を用いての計測法を採用し,生体高分子のレーザーイオン化に関する研究を本年度は中心に研究を行った。一方,植物の環境ストレス下における細胞伸長における応答を調べるために,培養植物を用いて,塩ストレス,養分欠乏,低温ストレス,高温ストレス,植物生長調節剤・除草剤を用いての生長阻害を誘導することにより,細胞レベル及び組織レベルで水分生理学的に環境応答機構について検討した。 1:植物の環境ストレスに対する応答に関する研究 細胞伸長阻害はいずれの環境ストレス応答に対しても起こった。細胞レベルでプレッシャープローブを用いて非破壊計測を行ったところ,生長部位では膨圧の維持がほとんどのストレス条件下で認められた。高温ストレスの場合は膨圧の低下が起こっていた。ストレス条件下では溶存物質の蓄積が積極的に起こっていて,浸透圧を調節する機構が働くことが明らかとなった。生長速度はいかに細胞内へ水が流入できるかを決定する生長に伴った水ポテンシャル勾配が制御していることが明らかとなった。 2:質量分析計を用いての微量分析 レーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI TOF-MS)を用いて生体高分子の分析を行うため,レーザーイオン化に必要なマトリックス物質の開発を行った。マトリックス物質とマトリックス物質を生体高分子に混合するための手法を開発するため,人為的に酵素を用いて糖およびアミノ酸を重合させたポリマーを作成し,MALDI TOF-MS計測を行って,業績を上げている。
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