本年度は、医療薬学の教育方法に関して取り扱い、アルバータ大学から薬物治療学、ファーマシューティカル・ケア担当の教員を招聘し実際に日本の大学院生(一部学部学生も含む)に対しての少人数教育の教育プランを実施した。特にProblem Based Learningという、模擬ケースを利用した教育方法の有用性について検討した。ケースには心臓病およびそれに関連したトピックスとして、不整脈、心筋梗塞、高コレステロール血症を取り上げ、本学の大学院生をモデルに講義、演習を行いその有効性を検証した。 形式は病態生理学、病因論、リスクファクター、医療経済までを事前に講義形式で理解させ、それをもとに具体的な患者の模擬ケースを作成する。さらに、講義内容を基にファーマシューティカル・ケアの実践としてケアプランの作成まで演習する。さらに、その後に心臓病の薬物療法に関する薬剤師の関わりについて講義が行われた。大学院生達の理解力は飛躍的に上昇した。薬学教育の中でProblem Based Learningを積極的に取り入れた例は少なく、今回のアルバータからの教員の招聘によって、この方法が日本における薬学教育に有効であることが明らかとすることができた。6年制に移行した場合、高学年になるに従ってProblem Based Learningの考え方を積極的に取り入れた教育プランを作成すれば有効な医療薬学教育が実施できることを示された。 さらに、薬物療法に対し薬剤師がどのように関われば有効であるかを検証する方法論についても触れられ、今後の薬剤師の新しい研究スタイルが示された。そのような能力を学生時代に付けさせることは今後の薬剤師教育に不可欠であり、教育年限延長に際しては重要視されるべき職能の一つであると認識できた。
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