研究概要 |
本研究は外来患者への麻酔法と術後管理を課題としているが,全体を通じて疼痛対策が大きな問題点の1つとなる。その中でも術後管理の領域では,術直後から数週間の短い期間における疼痛対策がこれまでは重視されてきたが,加えて患者の QOLが重視される近年では,術後数か月から数年におよぶ長期の疼痛に対する対策が注目を集めている。このような長期間にわたる疼痛への対策としては神経ブロック療法,鎮痛薬などを主に用いる薬物療法,通電やレーザー光などの照射による理学療法,鍼灸や漢方薬による東洋医学療法などが行われている。 これらの中で東洋医学療法では主に血行改善の目的でトウガラシが古くから用いられてきたが,トウガラシの辛味成分であるカプサイシンの鎮痛効果が諸外国を中心に注目されており,最近では神経細胞における鎮痛効果の作用機序の解明も進んだことから,日本国内でも一般的な臨床応用に向けて研究が行われている。これまでの我々の研究では,ラットの口腔粘膜へ0.075%のカプサイシンクリームを1日1回塗布することで,塗布部位からの神経伝導が抑制されることを体性感覚誘発電位(SEPs)を指標として解明した。そこで本年度はヒトの顔面部の疼痛を対象にパイロットスタディーを行い14例中 9例にカプサイシンクリームの有効な疼痛緩和作用が認められたことから,この結果を8月22日から27日までウイーン(オーストリア)で開催されたInternational association for the study of pain の9th World congress on painにおいてClinical effect of capsaicin cream on facial painと題して研究報告を行った。またこの際,マンチェスター大学(英国)において外来患者を対象とした日帰り麻酔の実情調査と研究打ち合わせを行い,平成12年6月30日に東京で開催される日本麻酔薬理学会第22回学術大会においてDay case anaesthesia in UKと題してB J Pollard教授が報告する予定である。
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