研究代表者は、コミュニケーションの中で、相手にいかに効果的に情報を伝えることができるかということを一貫して大テーマにしてきている。この大テーマの下に、言語理解、顔の認知の研究を行っている。 "顔から年齢を読み取るのは上手くなるか:保母と介護福祉士との比較"という表題の論文の修正稿を提出し、現在審査の最終段階に入っている。掲載の可否がじきに出るはずである。この他は、まだ学会発表を行った段階である。論文として投稿する予定のないものも含めて、平成11年度に行った学会発表は次の通りである。6月に認知科学の国際学会"the Second International Conference on Cognitive Science"で"Interpretation of Japanese nominal tautologies(同語反復文の意味解釈)"というタイトルの発表を行った。また、10月に日本心理学会第63回大会において"顔から読みとりやすい感情と読みとりにくい感情:表情の文脈依存性について"という題目で発表した。 現在、二つの実験を行っている。一つは"新奇な隠喩文の理解過程"を調べる実験である。ポーランド語および中国語でよく使われる慣用的な隠喩を日本語に直訳し、それらに文脈をつけて日本人の大学生に理解させている。隠喩は、人間に共通する普遍的な概念基盤の上に作られる言語表現なので、日本人にとって目新しい新奇な隠喩文であっても思いのほかたやすく理解できる。この実験のデータを分析し、適切な比喩が適切である理由が、概念的比喩を含む普遍的な概念基盤をたやすく使うことができることである点を主張したい。もう一つの実験では、似顔絵とトレースを使って、顔の識別過程を調べている。顔のどのような特徴を誇張すると本人らしく見えるのか、そうした特徴は個人によって異なるのか、等を調べている。
|