平成12年度は以下のような研究・調査・研究発表を行った。 (1)再度米国のボストン大学ならびにジョンズ・ホプキンズ大学の文書資料館を訪問し、わが国心理学の父・元良勇次郎の留学時代の学習カリキュラムについて調査を行った。当時の心理学実験室の様子や時間割、シラバスに関する情報を入手して分析した。 (2)東大に心理学専修が成立した1905(明治38)年と翌年の卒業生計14名について在学中の研究(卒業論文)や進路について検討した。心理学専修の独立時は、精神哲学的な研究も多く、必ずしも全てが実証研究だったわけではなかった。 (3)元良勇次郎の研究のを検討したところ、「縦書き・横書き文字の読み易さ」「白内障患者の開眼時の知覚成立」「障害児の注意力養成」などについて、独自の実験を工夫して研究をしていたことが明かとなった。 (4)明治期以降の「変態心理」について検討し、催眠術や透視ということが「実際にやってみる」という意味で「実験」と称されていることがわかり、実験概念自体をさらに検討する必要があることが示唆された。 (5)スウェーデンの国際心理学会に出席し、日本の初期実験心理学について発表し、海外の心理学史研究者と意見を交換した。 (6)元良勇次郎の全著作についてリストを作成し、ウェブサイト上での公開を行っている。
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