現代人の3人に1人は睡眠問題を抱えており、その結果、日中に耐え難い眠気や居眠りが発生している。眠気や居眠りによる産業事故や作業能率の低下は、甚大に被害を与えているにもかかわらず、この予防対策に有効なシステムの開発は遅れている。そこで、本研究では、覚醒レベルを維持するための方略の一つとして短時間仮眠法の有効性を検討した。 実験前2週間連続して活動量を計測した結果、睡眠習慣に乱れがなく、仮眠の習慣をもっていない者10名(20〜22歳)を被験者として選択した。通常の夜間睡眠後、10:00から18:00まで20分毎に、1)安静時脳波、2)眠気・疲労、3)コンピュータ課題による作業成績を測定し、12:20から20分の仮眠をとる条件と、仮眠をとらない条件における成績を比較検討した。その結果、1)仮眠をとらないで単調作業を続けると、覚醒度が低下するとともに午後に強い眠気が発生する。2)短時間の仮眠をとると覚醒度が上昇し、眠気が改善されるのみならず、作業に対する自信をもたらす。以上の点から、午後の眠気を改善し、日中の覚醒レベルを維持するための方略として20分間の短時間仮眠が有効であることがわかった。 従来、日中に仮眠をとると、1)かえって眠気や疲労が増大し、作業成績が低下すること、2)その後の夜間睡眠に悪影響を及ぼし、不眠が発生することが指摘されてきた。しかし、これらの結果は、仮眠時間が1時間以上と長いためにマイナス効果が現れたと考えることができる。本研究では、仮眠時間を10〜20分の短時間に抑えることによって、1)その後の夜間睡眠に影響することなく、2)眠気や疲労を抑え、作業成績を改善することができることを明らかにした。
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