本研究の目的は、人間の形態知覚における画像分節化過程を動的システムとしてとらえて、そのプロセス、脳機構を明かにすることである。そのために、平成11年度の計画では、1)主観的輪郭/面知覚過程のタイムコース、2)画像分節化に関与する処理過程間の関係性、の2種類の精神物理学実験を行い、画像分節化に伴う視覚の諸過程間の時間特性、継起順序性を検討することであった。1)に関しては、主観的輪郭と呼ばれるものの多くが、基本的には、方位・空間周波数・位置にチューンした線形フィルター処理(1次機構)後、その出力に整流処理を施し、さらにそのプロフィールに対して第2段のフィルター処理(2次機構)を加えることによって抽出することが可能である。そこで、2次機構の時間特性、すなわち、下位チャンネル(2次の成分に対する方位・空間周波数選択性)間の相互作用と主観的輪郭の知覚タイムコースとの関係の検討を行うこととした。そのためには、2次機構の下位チャンネルの基本特性(帯域幅、1次機構との接続関係等)が必要であるが、先行研究では不明な点が多い。そこで、選択的順応の手法等を用いて、2次機構下位チャンネルの空間周波数・方位の帯域幅の推定、および、2次機構と1次機構の接続関係の検討を行った。この検討は、2)の多重解解像度フィルターの動的リンクの問題とも密接な関係を持つ。実験の結果、2次機構においても、1次機構とほぼ同じ程度の帯域幅の空間周波数選択性があるが、方位選択性はやや緩いこと、2次の各下位機構へ入力する1次機構の空間周波数性は限られているが、方位はそうでない可能性が高いことなどが明かになった。エッジやバーという特徴を形成するために、1次と2次の異スケール情報がどのような時間特性をもつプロセスの中で統合されるのか、現在検討中である。
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