1.単語の認知に伴う脳活動が、刺激の音韻的な属性の反復によってどのように変化するかを、脳磁場(MEG)を用いて調べた。被験者は右利きの健常者12名であった。脳磁場は左右の側頭部から記録した。刺激には同音異義語の対252対を用いた(例:性格-正確)。そして一方の単語(初回呈示)の直後(直後音韻反復)もしくは9語後に(遅延音韻反復)、その同音語を呈示し、これら3条件間で脳磁場の振幅を比較した。その結果、直後音韻反復条件における脳磁場の振幅(潜時300-600ms)が、初回呈示条件のそれに比べ有意に減衰した。この減衰は左右両半球で観察された。この潜時帯における信号源は、主に左右のシルビウス裂周辺部(聴覚野近傍)に推定された。そして同部位の活動量は、音韻の反復により減衰していた。本結果は、シルビウス裂周辺部の活動が漢字単語の音韻処理に関与していることを示している。 2.単語の認知に伴う脳活動に対する選択的注意の影響を脳磁場(MEG)を用いて調べた。刺激にはカナカナ語を用い、半数を赤色、残りの半数を緑色で提示した。被験者は右利きの健常者14名であった。脳磁場は左右の側頭部から記録した。被験者には、どちらか一方の色の単語に注意を向けて、その単語を覚えるように教示した。その結果、注意を向けた単語に対してのみ、左側に潜時300-600msの成分が認められた。推定の結果、信号源はシルビウス裂周辺部(聴覚野近傍)に推定された。本結果は、被験者の意図によって、左シルビウス裂周辺部の活動が統制可能であることを示唆している。
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