本年度においては、チームの役割分担について原子力プラントで実際に動務しているプラント運転員を対象として、ヒアリング調査を実施した。運転員の職階は、キャリアに伴い上位から順に直長、主任、班長、制御員、主機員、補機員である。ヒアリング結果は以下のとおりである。 通常、運転員は、コンピュータ制御された操作状態を監視することが業務である。しかし、ひとたび不具合が生じ、警告シグナルが発せられると、彼らはその原因を追求する診断医となり、それを処理する問題解決者となる。この際に付与されている役割機能が発揮される。一般に各職階に要求される役割は、1)直長はシステム全体の状況を把握し、逐次外部連絡を取る。2)主任及び班長は、直長からの情報を制御員・主機員に伝えるとともに彼らのフォローをする。3)制御員は原子炉関係、主機員はタービン関係のパートを担当し、ともにパラメータの挙動に注意を払いながらマニュアルオペレーションを行うことである。 しかし、最近のシステムは自動化されているが故に原因特定の不確定性が高く、時間的制約もあることから、解決が難くなる場合も有りるとのことであった。また、多くのベテラン運転員に共通した懸念は、若年者層の教育・訓練時に習得した知識や技能が、実際にトラブルに遭遇した際に発揮できるのか、という点であった。さらには、調査結果によると、直長はチームメンバーの知識・経験を把握していると自ら評価していた。一方、他のチームメンバーは相互にメンバーの役割については認識しているものの、職階が下位になるにつれ、知識・披能レベルについての他者評価は暖昧になる傾向が認められた。そして、誰が誰をバックアップするかといった冗長性についてはチームごとに異なる上に、緊急時におけるチーム構造やチーム内の相互補完機能は事象依存性が高いと認識していることが明らかとなった。
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