研究概要 |
1 目的:言語音のカテゴリー判断には、音響的特徴を正確に抽出する処理(低次のレベル)と、それを音韻記憶と照合させる処理(高次のレベル)が必要なことが知られている。本研究の目的は、老年者の言語音のカテゴリー判断の良否に関わる要因を、低次、高次のレベルに分けて検討することである。 2 平成11年度の研究実績:合成音声と実験課題を作成し、予備実験を行った。(1)実験課題の内容は、実験刺激と、それに時間的に先行する刺激(係留刺激)を対にして呈示し、係留刺激の存在が、実験刺激に対する判断をどのように変化させるか(係留効果)を測定するものである。(2)実験刺激として、第2、第3フォルマントを変化させることにより/ba/から/da/に至る刺激連続体(9種類)を作成した。(3)係留刺激として、以下の3条件、計5種類の刺激を作成した。(1)実験刺激/ba/,/da/と、音響的特徴が完全に同一な係留刺激/ba/,/da/。実験刺激が/ba/か/da/かを判断する際の、低次のレベルの処理に対して影響を及ぼすと仮定される。(2)実験刺激/ba/,/da/に対応する係留刺激/pa/,/ta/。実験刺激が/ba/か/da/かを判断する際の、高次のレベルの処理に影響を及ぼすと仮定される。(3)実験刺激/ba/,/da/の母音部分に相当する/a/。 3 今後および平成12年度の計画:若年者、老年者を対象とした実験の実施、データの解析を行い、カテゴリー判断の低下に関わる要因を明らかにする計画である。(1)係留刺激が、(1)実験刺激と完全に同一か、高次のレベルで同一か、(2)係留刺激と実験刺激との時間間隔が短い(聴覚的記憶の関与が大きい)か、長い(音韻的記憶の関与が大きい)かを統制し、係留効果を測定する。(2)若年者と老年者とで、係留効果の現われ方に差があるか否かを検討する。
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