研究概要 |
沖縄県の地方紙である「琉球新報」および「沖縄タイムス」に掲載された記事の内,「模合」に関する記事を収集し分析を行った。「琉球新報」については97年1月1日以降、「沖縄タイムス」は98年1月1日以降の朝刊及び夕刊を対象とし、67件の記事を分析した。 模合の行為者の属性をみると、男性41名、女性25名(性別不明1名)で男性が多くなっている。年齢は20歳から90歳まで幅広いが、平均年齢は54.4歳とやや高めとなる。模合の母胎となっている社会集団に注目すると、最も多かったのが学校の「同期生」というカテゴリーで19件であった。同期のなかでもとりわけ高等学校の同期生が多く、10件を数えた。次に多かったのは、「職場」「近隣」「同業者」に分類されるもので、それぞれ4件ずつを数えた。この内「職場」カテゴリーには退職者の集まりも含んでいる。このほか、子女の属するクラブの「父母会」、「趣味のサークル」などが認められた。 模合の場では、単に金銭の流通のみが行われているわけではない。模合に伴う飲食やカラオケなどの遊興は当然の如く行われ、定期的な模合の座以外でも、模合仲間で旅行に出かけ、あるいはスポーツ大会に参加するなど、より頻繁な接触を持ち親睦を深めている。また、単に親睦的会合にとどまらず、模合のグループが核となって、救急手当の講習会を開催したり、ベンチャー企業をバックアップする団体を設立するなど、模合から新たに別の社会的活動を生み出してゆく例も見られた。 かつての模合の機能は一義には実利的・経済的な相互扶助にあったが、現代の沖縄においては親睦的な機能にその比重が置かれている。人々は様々な機会を捉えては模合を行い、親密な人間関係を重層的に形成している。今後は、事例研究を行いより詳細な資料を得ると共に、なぜ沖縄にのみ存続し続けるのかについて考察してゆきたい。
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