平成11年度は、阪神大震災で甚大な被害を受けた分譲マンションの復興過程の動態を分析・評価するために、ペトリネット理論に基づくモデルを開発した。ペトリネットは、あるシステムの論理的構造を視覚的に明示化するとともに、システムの動的挙動を分析するための数学モデルである。本研究では、阪神大震災で大被害を受けた分譲マンション41棟の復興過程に関する調査結果をもとに、復興方法-建替か補修か-の決定に至るまでの合意形成プロセスを、ベトリネット手法を用いてモデル化した。その結果、特に、復興方法をめぐって住民間コンフリクトが存在するマンションの復興過程について、次のことが明らかになった。すなわち、第1に、復興方法確定の鍵になっているのは、「被害状況の確定」であること、第2に、被害状況の確定をめぐるコンフリクトの帰結としては、(1)被害の過分性が確定し、建替決議が成立するが、補修派が決議の無効を訴え提訴、(2)複数回に渡って建物調査をするが、被害程度の確定できず、(3)原形復旧可能で、補修決議成立、の3つのパターンが存在すること、第3に、コンフリクト解決への実践的知見として、(1)復興初期段階において、住民の経済状況や原形復旧の可能性を考慮しつつ、復興方法についての合意形成を図る、(2)被害の過分性が争点となることを避けることができるように、被害程度判定基準の整備や第三者専門機関の設立を図る、(3)建替決議の法的要件から被害の過分性を外す、の3点が指摘できること、である。次年度は、このペトリネット・モデルに基づいて、ゲーミング・シミュレーションを作成し、実施する予定である。
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