研究概要 |
本研究の目的は,日常的課題の解決から科学概念を学習することがどのような認知的,社会的な効果を持つのかを検討することであった。同意を得た小学校および中学校で以下の2つの授業観察および授業研究を行い,科学概念の学習において,日常的な課題の役割およびその効果的な利用方法について検討を行った。 1)小学校の6年生理科「ものの燃え方と酸化」の授業を取り上げ,「瓶の中のロウソクを長く燃やすためにはどうすればよいか」などの課題を子どもたちがグループで解決するときの様子を観察した。2人の子どもを中心に発話や他の子どもとの関わりを分析した結果,仲間との発話パターンや相互交渉の仕方,そこから課題解決を導くプロセスに特徴的な違いが見られた。すなわち,一方の子どもは,他の子どもとのやり取りを手がかりにして,課題に効果的に取り組み,学習を的確に進めていた。 2)中学校2年生が身近な現象として電流について学習するときの効果的な教授方法として,理科と数学とのクロスカリキュラム的な学習の効果を検討した。具体的に,電圧,電流,抵抗の関係について学習する授業において,一方のクラスでは(実験群),班ごとに,電圧,電流,抵抗の関係を調べる実験を自分たちで考え,実験結果から3者の関係を導き,式に表現するという学習活動を行った。他方のクラスでは(統制群),電圧を変化させたときの電流の大小を調べ,電圧,電流,抵抗の関係を学習した。学習後,電流に関する理解を幾つかのテストによって調べ,授業の効果を比較した結果,実験群のクラスの成績が統制群のクラスの成績よりも有意に高かった。
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