研究概要 |
本研究では,特定の既有の知識領域に対する専門性の発達レベルを縦断的に調べ,その専門領域を基底領域とする類推的思考過程(知識の検索,写像)を各レベル間で比較し,専門性の発達と類推の関係を仮説化していくことを目的としている。具体的には,(1)基底領域の解釈(a:b間の関係をどう理解するか),(2)目標領域を完成させるために選択した項目(c:dに適用する項目として何を選ぶか),(3)目標領域で生成された知識カテゴリーの種類・範囲(基底領域の知識がどの程度異なる領域にまで広く転移されているか・文脈的固着の有無)がどう異なるかを,個人の思考プロセスに焦点化して分析する。特に,形式的な専門性が重視される自然科学的領域(眼科学)と実用的専門性が重視される社会科学的領域(教育学)に注目し,それぞれにおける専門性の発達過程を詳細に検討しながら,その専門的知識を利用した類推的思考の特徴がどのように対応付けられるかを検討することを本研究の目的とする。 具体的には,眼科学に関する専門群として眼科医療技師専門学校生(1〜3年次)と,教育学に関する専門群として教員養成系大学生(1〜4年次)を被験者とし,「水晶体と網膜の関係は,(x)と(y)の関係のようなものである.なぜならば,(z)だからである.」のような類推文完成課題を実施した。被験者の解答は口頭で自由記述形式で行わせ,反応は全てカセットテープに録音し,分析データとした。この課題の終了後,眼科群に対しては「目の構造」,教育群に対しては「教育」に関する専門性(知識)を測定するテストを実施した。 本年度は,以上の手続きによる実験を1回実施し,データは現在分析中である。次年度は,分析の結果を踏まえた上で,必要に応じて補足実験を行い結論を導く予定である。
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