これほど「突然キレる子供達」の問題が深刻化しているにもかかわらず、わが国の児童生徒の怒り水準を客観的に測定できる「怒り尺度」は、未だ市販されていないのが現状である。そこで、本年度は、一般大学生を対象にして、場面に応じて変化する怒り水準を測定できる「大学生版怒り尺度」を開発することにした。 本研究の被験者は、大学1年生191名(男性61名、女性130名)である。調査は、大学の講義時間を使って、大学1年生に対して実施した「怒りやすい場面に関する自由記述調査」の結果、収集された50項目からなる「大学生版怒り尺度(暫定版)」と、深町ら(1959)によって開発された「CMI健康調査票」を実施する形で、行なわれた。 次に、「大学生版怒り尺度(暫定版)」の回答に対して、0点から4点(全く腹が立たない-とても腹が立つ)を与え、各項目得点の平均値が1.5以下の明らかに怒り水準が低いと考えられる15項目を削除した。そして、項目分析の結果、削除されなかった35項目について、主因子法・バリマックス回転による因子分析を施したところ、「友人関係因子」、「自己不満因子」、「他者不満因子」、「学校生活因子」、「親子関係因子」という5つの因子が抽出された。 以上の手続きを経て、5つの下位尺度、計35項目からなる「大学生版怒り尺度」が開発された。来年度は、本尺度を参考にしながら、「児童生徒版怒り尺度」を開発するとともに、発達段階を追って、怒りの発現メカニズムを解明していきたいと考えている。
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