研究概要 |
「不安」,「抑うつ」、「怒り」という人間の3大情動のうちで、最も研究が遅れている領域は「怒り」である。そこで、場面ごとに「怒り」を客観的に測定できる「怒り尺度」及び「怒り対処行動尺度」を開発し、青少年における「怒り」の発現メカニズムを解明することにした。被験者は、小学1年生から6年生849名(男子469名、女子380名)、中学1年生から3年生326名(男子167名、女子159名)、高校1年生から3年生251名(男子121名、女子130名)、大学1年生191名(男性61名、女性130名)である。 まず、大学生を対象に予備調査を行い、「友人関係」、「自己不満」、「他者不満」、「学校生活」、「親子関係」という5つの下位尺度、計35項目から成る「大学生版怒り尺度」を開発し、その尺度を用いて、怒り水準と神経症傾向とには密接な関連性のあることを明らかにした。 次に、大学生版と同様の手続きにより、信頼性、妥当性の高い「児童版怒り尺度」(25項目)、「中学生版怒り尺度」(30項目)、「高校生版怒り尺度」(30項目)を開発した。そして、その尺度を用いて、糖分中心の偏った食習慣や朝食抜きの生活、いじめを受けること、ストレスをためること、授業が理解できないことなどは、特に怒り水準を高める大きな要因になっていることが判明した。そして、怒り水準は、男子は年齢とともに徐々に上昇し中学3年生頃がピークであるのに対して、女子は小学6年生から中学1年生にかけて急上昇する傾向が見られる。さらに、怒り場面における対処行動を分析するために、「児童版怒り対処行動尺度」(25項目)、「中学生版怒り対処行動尺度」(20項目),「高校生版怒り対処行動尺度」(25項目)を開発し、年齢とともに、怒り場面において援助行動をより採るようになり、怒り水準と怒り場面における攻撃行動傾向との関連性がより大きくなることを明らかにした。
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