現在学校現場では、教師コンサルテーションなど教師とスクールカウンセラーの連携が要請さている。コンサルテーションの第一段階は、対象の把握すなわち見立てである。個人を超えた学級や学校への介入においても、個人と同様に学級・学校の性格(すなわち学級風土・学校風土)の見立てが必要である。しかし個人を対象とした各種のパーソナリティテストなどに対して、それに相当する学級を見立てるための具体的方法は確立されていない。またスクールカウンセリングにおける学級への介入の基礎となる臨床心理学的な見地からの学級研究もほとんどない。そこで、本研究では、平成9年度〜10年度奨励研究(A)「中学校の学級風土と生徒のメンタルヘルス」から継続して、学級の見立てに向けた学級風土アセスメント質問紙の開発と、それによる介入研究を行った。具体的には、第1に、85学級を対象とする調査結果に数量的検討、特に学級単位の分析を加え、学級風土質問紙を完成させた。「学級活動への関与」「生徒間の親しさ」「自然な自己開示」「学習への志向性」など8尺度からなる質問紙を得た。第2に、平成10年度から11年度に、質問紙の妥当性検討として、中学2年生1学期から中学3年生3学期まで同一の4学級を対象に各学期ごと6回、学級風土を査定し、学級の持続的な個性とその時々の変化を質問紙が把握し得るかことを確認した。第3に、平成11年度から12年度には、質問紙による学級風土の査定結果を媒体とした教師コンサルテーションを継続的に行い、質問紙の実践的な利用法を検討した。その結果、質問紙による個別具体的な情報により、カウンセラーと教師、あるいは教師相互に、学級の具体的なイメージを共有でき、具体的な問題解決策を検討する基盤が得られた。なお、効果的な介入に向けた短縮版の作成と、中学校からの要請による学級・学校風土改善のための介入研究を現在継続中である。
|