研究概要 |
平成11年度は医療行為に対する情報希求度を測定する質問紙を作成し、それに影響する要因を検討することを目的とした。現在質問項目の選定及び調査用紙の配布は終了し、一部分析途中である。研究経過と内容は以下の通りである。 1.質問項目の選定:先行研究(大木・福原、1997他)を参考に「情報希求度」に関連すると思われる要因を検討した。その結果、医療行為に対する「自己決定度」、病気やけがの際の「情動状態」と「ストレス対処法」、「Health Locus of Control」、出来事に対する認知の仕方に影響する「認知的歪み」の5要素を選定した。また属性の内容も先行研究を参考に決定した。 2.調査用紙の作成と配布 (1)被調査者:現在入院していない(以下、健康群)関東地方に在住の16歳から79歳までの人を対象とし、無作為抽出法で選定した3000名に(2)の調査協力を依頼した。現在300部程度回収している。またがん患者(以下、患者群)は100名程度を予定していたが、まだ回収は20部程度である。患者群の調査は本報告者の非常勤講師先の病院に依頼した。 (2)調査用紙:以下の7つのパートから成る。(1)「情報希求度」:大木・福原(1997)24項目。具体的な疾病の5ケースと一般的な内容の質問。(2)「自己決定度」:ohki & Fukuhara(1995)の邦訳版の20項目。(1)と同じケースと一般質問。(3)「Health Locus of Control」:堀尾(1991)25項目。(4)「ストレス対処の傾向」:Lazarus & Folkman(1992)の邦訳版64項目。ストレッサーを病気やケガと限定した。(5)病気やケガの際の「情動状態」:神田・大木(1998)10項目。(6)「非理性的な信念」:Ellis(1985)の邦訳版(野口,1996)の計90項目。(7)属性:年齢、性別、学歴、婚姻状況、職種、収入、同居人の有無、疾病の既往歴の8要因。 3.分析:患者群のデータが収集途中のため、現在の分析は以下の段階である。 健康群のみを対象にし、因子分析によって説明力のある質問項目を選択した。その結果、情報希求度と自己決定度に関しては、先行研究(大木・福原,1997,1999)とほぼ同様の項目が選定されており、交差的妥当性が検証されたと考えられる。
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