研究概要 |
1.自律訓練法の練習中に生じる副作用的反応の予測と適切な対処を促進することを目的として、練習経過の実践記録152名分を分析し、記載されていた副作用的反応の種類と頻度を標準練習の段階ごとにまとめた。また、最終的な治療効果の大きかった者と小さかった者の副作用的反応の特徴を比較した。結果として、(1)標準練習全体を通して多くの実践者に共通する反応が見られること、(2)各練習段階ごとに発生頻度の多い反応があること、(3)治療効果の大きな者は副作用的反応の発生数は少なくないが、同一の不快な反応に対する認識の仕方が肯定的で柔軟なものに変化していくことが確認された。現在、専門指導者による各副作用的反応への対処法を調査中である。 2.自律訓練法習得前後の実習者の認知スタイルの変化を、不安水準の変化及び訓練過程における副作用的反応の消長と関連させて調べることを目的として、健常者38名に自律訓練法の標準練習を段階的に4週間実習させて練習中の反応を調べるとともに、肯定的・柔軟的・客観的認知スタイル尺度(坂入,1999)とSTAI特性不安尺度を実習期間の前後に実施した。結果として、練習経過で継続的な副作用的反応(不安感の増大、息苦しさ、動悸など)を体験した者(13名)は、体験しなかった者(25名)より有意に大きく認知スタイル尺度の客観性因子(p<.05)及び総合点(p<.05)が増大し、特性不安水準が低減した(p<.01)。この結果は、自律訓練法を単なる弛緩法ではなく、「訓練課題の体験を通しての認知スタイルの変容技法」と見なす考え方を支持するものであった。また、練習過程で生じた生理的な反応としては、練習中及び実習経過における末梢(手指)の皮膚温の顕著な上昇および自発性皮膚電気反応数の減少が確認された。
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