本研究は、心理学実験などの顔刺激として利用するための、日本人大学生男女のさまざまな感情表情の公開用刺激セットを作成することを目的として行なった。 まず、研究用に顔写真を公開することを前提に被写体(実験協力者)を募集し、文書で同意した者のみ撮影を行なった。本年度の被写体人数は30名であった。撮影では、ストロボ2灯を被写体正面と被写体真上から、ともにトレーシングペーパーでデヒューズして当てた。被写体は椅子に深く腰掛けた状態で、グレーの背景紙を背にして肩から上を縦位置で撮影した。撮影は複数回に分けて行なった。 1回目の撮影では、日常的な場面での感情表現をしてもらうために、寺崎らによる8つの感情(抑うつ・不安、敵意、倦怠、活動的快、非活動的快、親和、集中、驚愕)それぞれについてキーワードを示して被写体本人の経験を想起させ、実験者(撮影者)が書き取った。そして、被写体にそれらの場面で出現するであろう顔を作らせて数枚ずつ撮影した。このとき、被写体には鏡を見せたりせず、できるだけ自然な表情になるように教示を行なった。 2回目の撮影では、まず、エックマンとフリーセンによる外国人被写体の表情や解説を提示し、鏡を見ながら驚き、恐怖、嫌悪、怒り、幸福、悲しみの6つの表情を練習させた。そして、実験者がすべての表情を撮影した後に、延長レリーズを被写体に渡し、被写体本人のペースやタイミングでシャッターを切らせた。 3回目の撮影では、被写体の座る向きを変えて、正面、左右横、左右斜め、後方から撮影を行なった。撮影終了後には、各種の質問に回答を行なわせた。なお、1〜3回目のセッションで失敗した場合に備えて、予備として4回目のセッションを設けた。 なお、本研究は2年計画であり、初年度に当たる本年度は撮影のみを行なった。写真の選択や標準化の手続などは次年度に行なう予定である。
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