本研究は、日本と米国の小学校のフィールドワークと、一日を通した実践のビデオデータに基づき、どのような言語教育活動がどのような談話構造を伴って営まれているかを明らかにすることを目的とした2年計画の研究である。今年度(1年目)は、米国の小学校と日本の小学校(総合学習導入前)の4、5年生の学級での一日を通したビデオデータ及び教師へのインタビューにもとづき、言語教育の実践の特徴を記述する分析を行った。その結果、現時点では次のようなことが明らかになっている。日本の小学校では、国語科の共通の教科書を用いた一斉授業や図書館を利用した読書活動などが主な言語教育実践の場として位置付けられているのに対し、米国の小学校では、(1)学級や学年を通して共通に行われる文法に関する課題や読書などの毎日のルーティーン、(2)各教師の工夫と選択による、内容に幅のある課題で構成される授業活動、(3)保護者を中心とした地域のボランティアによる読書・読解活動などが相互に関連しつつ言語教育を構成している。特に(2)では、理科や社会科など複数の領域にまたがる内容について、各生徒自身がテーマを選択し、情報を収集し、その利用法を考え、リファレンスつきの文章にまとめるというような実践が構成されるケースが多数観察された。このような活動は、いわゆる学校国語的リテラシーの枠を超えて、日本や米国の現代社会の様々な実践の一部となっているリテラシーを教室の活動の中に取り入れつつ培う場となっている。時間割や年間スケジュール、教授法、教室配置など多くの点で各教師の個性と教育観を反映し、かなりの幅をもって多様に構成できるようなシステムになっていることが(2)のような言語教育実践の形態が生まれる背景にあると考えられる。
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