1.学力低下問題:高校以下の教育の多様化と大学入試科目削減が同時に進行した現在、大学生の基礎学力の低下が大きな問題となっている。大学進学希望者が早い時期から受験科目を絞り込んで勉強するために、大学入学後の教育に必要とされる基礎的な科目を学んでいないばかりか、学習態度や意欲にも欠けるという指摘がなされている。 2.AO入試:AO入試はアメリカのアドミッションオフィスに由来して命名されたために、アメリカ流の入試と思われているが、実態は全く異なる。問題は、AO入試が「学力抜き」の入試であるという認識が行き渡っていることで、大学入試の学力維持機能が崩壊を始めているため、学力低下に拍車が掛かっている。 3.総合試験:そうした中、共通試験に総合問題を導入することは、大学入試の学力維持機能を高めるための一つの方法と考えられる。倉元・柳井(1999)では、総合試験の構造が分析されたが、科目内容を元に総合を考えることに限界も見られる。 4.Rule Space Methodology:分析のツールとして、アメリカの社会的風土の下に発展してきた項目反応理論を用いた認知的論的分析法であるRule Space Methodologyは一つの有力な可能性である。しかし、日米のテストに対する考え方の違いを考えると、直接的な応用には未だ慎重にならざるを得ない。 5.展望:今後は、高校教育と大学教育の接続を重視したテスト問題作成の開発が重要であり、個別試験やAO入試向けの総合試験の開発研究が次の課題と言える。
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