学力低下問題が大きく取り沙汰されているが、本研究は学力の構造について実証的にデータから議論するための分析方法を検討する基礎研究である。 本研究で行った研究活動のテーマは、具体的には2つに分けて考えることができる。ひとつは共通試験用の総合試験のための基礎研究であり、実践的な性格が強いものである。もう1つは「ルールスペース法(Rule Space Methodology)」の理論に関わるものである。 前者に関しては、昨年度まで収集したデータを元に、大学入試研究ジャーナルに論文を発表した。行動計量学、および、大学入試センター研究紀要に論文を投稿、それぞれ資料として掲載されることとなった。双方とも、現在、印刷中である。 ルールスペース法は、テストの科学にとって極めて重要な理論であり方法である。しかしながら、本邦では先駆的な学会発表等があるものの、まだ、正式に紹介されていない。そこで、本研究では、「ルールスペース法 -テストの診断的利用に対する測定論的アプローチー」という展望論文を執筆し、本科学研究費の報告書として採録することとした。 同報告書に採録した論文の主要な目的はルールスペース法に関わる専門用語の日本語訳を定めることにある。海外に起源を持ち日本に紹介される学術的概念は、同一の概念に対して紹介者が好き勝手な訳語を当てることで、徒に混乱を来たす場合が多い。そこで、ルールスペース法の開発者である教育テストサービス(ETS)の龍岡菊美先生と1語1語協議の上、訳語を決めていった次第である。この方法に関心を持つ日本の研究者の方々に利用していただければ幸いである。
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