本年度は、昨年度実施した大量調査のデータを分析するとともに分析結果から新たに生じた問題を明らかにするため、聞き取り調査を実施した。 大量調査のデータから得られた知見としては、以下のものが挙げられる。まず第一に外国人及び同性愛者に対する寛容性について、先行研究よりも尺度の精緻化を行うことができたという点である。第二に、こうした人々に対する寛容性だけでなく、結婚・出生・性別分業・老親扶養に関する意識、権威主義的伝統主義、外国人労働者の受入・妊娠中絶・不登校に関する意見などについて、回答者の属性が一定の効果を持っていた点である。この点については、先行研究の知見を追認するとともに、札幌と東京といった地域の差異が効果を持たないという新たな知見を加えることになった。第三に回答者の属性が一定の効果を持つ一方で、これらの意識変数に対して、回答者が有する部分ネットワークがほとんど効果を持たなかった点である。この点は先行研究の知見とは大きく異なっている。さらに部分ネットワークに対する属性の効果を見てみると、教育年数などで、従来部分ネットワークの規模と相関関係をもつとされていた変数の効果自体が見られず、そのことが低階層及び若年層の回答傾向に起因していることが予想された。 こうした部分ネットワークをめぐる諸問題を明らかにするために、大量調査の回答者から回答結果を元に対象者を選び、聞き取り調査を行った。その結果、大量調査の分析から予想されたことがある程度裏付けられることとなった。
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