科研費の交付が12月と非常に遅い時期であったため、当初予定していた欧文の関連文献の収集および研究は、実質的には非常にわずかしか今年度は出来なかった。それでも、モンテスキューの文化的多元主義を明らかにするいくつかの成果は得ることが出来た。 ひとつは、ボルドー地方の地方行政官としてのモンテスキューの姿を想像することが出来る研究に触れたことである。当時の高等法院という機関の地域における役割は実に大きなものがあり、アンシャンレジーム期においてはその意味もさらに深かったことである。それは集権的権力から多様性ある個別の生活を守る、ほぼ唯一の防波堤であり、その立場にある政治家として思考するモンテスキューの人間像および思想のあり方を知ることは大いに役立った。さらにもうひとつは、哲学思想の世界にモンテスキューが与えた影響について、とくにロジェ・カイヨワに与えた影響について考える機会があったことである。カイヨワはモンテスキューの著作集を自ら編集する仕事をかって出て、その前書きで彼が間違いなくフランスで最も偉大な社会学者の一人であることを述べ、感情のエネルギーの社会における役割に関連して論じている。学説史上も意義のある発見だと思う。11年度の実績については以上である。
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