研究概要 |
今年度は,次の三つの領域で研究を行った。 1.まず「討議」をめぐる比較社会学を遂行するための理論的な基礎視角として,とりわけマックス・ヴェーバーの社会学の有する「討議論」としての性格に着目した研究を行った。その結果,ヴェーバーが<価値討議>という討議の形態を支持したことを解明するとともに,討議の意味づけについての類型論(例えば,<価値討議>と対比されるコンセンサス的討議など)についての基礎的な考察を行った。 2.これに付随し,とりわけ1999年11月27日・28日に研究代表者が主催したシンポジウム「マックス・ウェーバーと近代日本」を通して,戦後日本の社会思想・討議空間の形成にあたって,ウェーバー受容が果たした役割について反省を行った。そこでは時代の変遷とともに,とりわけ「近代」・「合理化」等のコンセプトの変遷について整理するとともに,日本の社会科学の討議自体の変遷課程について考察した。 3.以上のような理論的な考察を承け,日本の戦後の討議教育実践の展開についての考察を行った。そこでは,とりわけ1970年代頃より,「ディベート」というカタカナ言葉が,本来動議であったはずの「討論」と言う言葉と二項対立的に用いられるようになり,それが「日本人の議論の仕方」についての「神話」が形成されていった課程と呼応していることを明らかにした。
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