本年度は、以下の二点について重点的に作業をすすめた。 まず、既存のマクロ統計のデータベース化である。現時点で長期雇用を把握することのできる資料としては、「賃金センサス(就業構造基本調査)」における職種別の勤続年数、ならびに「雇用動向調査」における離職率がある。これらは研究目的を達するためにはあくまで代用指標ではあるが、我が国の雇用の流動性を全国的に網羅した資料として、ほとんど唯一のものであり利用価値はきわめて大きい。これらの過去の公表されたデータを、磁気ファイル化した。 二点目に1955年以来10年おきに実施されている、過去5回のSSMデータ・ファイルをもとにした、長期雇用測定のために必要なデータの作成を行った。SSMデータは、元来職業移動を中心とした各社会移動を把握するための調査である。したがってこのデータは、そのままでは長期雇用を測定するために用いることはできない。そこでSPSSのプログラミングによって、サンプルごとの各従業先における勤続年数を抽出した。 具体的には、あるサンプルが初めて職業に就いた年齢を初期値とし、2番目の従業先に移動した年齢との差を取れば、最初の従業先における「継続年数」が求まる。以下、同様の値を2番目、3番目の従業先と求めていき、現職あるいはすでに引退している場合には最後の従業先まで計算し、新たな継続年数のデータを作成した。これには継続年数のほか、従業先の業種、そこにおける本人の職種、役職、そして従業員数が含まれている(ただし、1955年調査に関しては、従業員数のデータはない)。
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