日本において、本格的な世論調査が始まったのは、第二次世界大戦後の占領下であった。その導入にあたって、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)のCI&E(民間情報教育局)の指導があった。本研究では、GHQ/SCAP資料などを用いて、日本における世論調査導入の過程を明らかにする。 CI&Eは、日本の世論調査機関について、多数の報告書を残している。それによれば当時、日本の調査機関が実施した世論調査には、調査の主題の決定から、調査票の作成、サンプリング方法、調査方法、集計の仕方、報告のあり方に至るまでの一連の調査過程のそれぞれについて不備な点が指摘されている。特にサンプリング方法についてかなりの問題があった。 それとともに、CI&Eが指摘するのは、戦後、創設された世論調査機関が、世論の測定よりも世論の啓蒙を目的としているものが少なくなかったということである。新聞社の世論調査部門においても、社論の確立のために世論を測定し、それによって政策に影響を与えることを目的としていた。つまり、世論を把握することとと、それによって世論それ自体や政府に影響を与えることの二重の目的を有していたのである。その結果、CI&Eは当時の世論調査が客観的でなく、社会的な信頼を得られないと判断を下している。 したがって、CI&Eは、政府や行政機関が世論調査を行うことを制限するとともに、新聞社などが実施する世論調査においては、CI&Eの指導によって、より厳格な方法を確立することを求めると同時に、世論調査の理念や目的についても、指導する必要があったのである。
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