本年度は、おもに資料収集と整理作業をおこなった。 1 近代以降の森林資源管理施策の展開過程にかんする文献、政府刊行物などを収集した。 2 兵庫県、滋賀県について、行政側の森林資源管理にかんする歴史的資料の所在を調査し、収集した。 3 伝統的森林管理システムとその変容を把握できる可能性のある集落について、集落の森林資源管理のリーダーに問い合わせ、歴史的資料の所在を調査した。市役所などの行政機関に移管されているものについては、その一部を調査した。 4 農林業センサス、人口統計などの基礎統計資料の整理をおこなった。 5 地域資源管理の日本的特色について理論的着想を得るため、大韓民国において資料収集をおこない、伝統的村落社会組織や地域自治にかんする文献・論文などを収集した。 これらの作業をとおして、つぎのような知見を得た。集落レベルにおいて、森林資源は、地域共有財産としての性格を備えており、近代以降、その利用権を厳しく制限する試みが数多くおこなわれてきた。しかし、高度経済成長以降、森林資源の経済的価値が失われ、管理義務をともなう利用権は、むしろ負担として意識される傾向さえある。そこで、自然保護や自然愛護など、森林資源管理の新たな意味づけがおこなわれるようになってきている。森林が親族共有財産となることはあっても、集落の地域共有財産として管理されることは一般的でない韓国の例と比較すると、日本の村落のもつ公的性格をうかがうことができる。来年度は、集落レベルの管理にたいする行政側の施策を中心に調査を進める予定である。
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