本年度の研究では、生活の質および自己決定に関する先行研究レビューを中心に行った。先行研究レビューで明らかになったことは、次の3点である。 (1) 高齢期においては、身体的な変化(体力の減退・視力の低下など)などのために、高齢者自身の自己イメージが変化し、自己コントロール感や自己効力感が喪失しやすい傾向にある。自己コントロール感や自己効力感は、自己決定のプロセスと密接な関係がある。つまり、自己コントロール感や自己効力感の低下のために、社会生活での活動の選択の幅が狭まり、自己決定もできなくなる。 (2) 自己コントロール感や自己効力感は、高齢者を取り囲む環境要因との関係が強い。個人的な要因のみではなく、自己コントロール感や自己効力感は、環境要因との関係で低下のプロセスが異なる。身体障害があったとしても、生活支援の環境が整備されれば、自己コントロール感や自己効力感の急激な低下は防ぐことができる。 (3) 自己コントロール感や自己効力感を保持できるような社会的支援や環境を提供することができれば、高齢者の生活の質を保持することができ、また、主体的な社会生活を行なうことができる。 来年度に向けての研究課題としては、本年度の先行研究レビューを踏まえて、自己コントロール感、自己効力感、生活満足度などの尺度開発を行い、その3つの概念の関係を明らかにする。そして、今後の居宅介護支援事業や居宅サービスでの支援上の課題について明示する。
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