本研究では、虚弱高齢者の在宅生活における生活の質と自己決定との関連について明らかにした。昨年度においては、主に文献研究を中心に研究を進めてきたが、今年度は、昨年の研究を踏まえて調査研究を実施した。調査対象者は、大阪府内3ヵ所のデイサービスを利用している在宅虚弱高齢者である。平均年齢は、約80歳で、性別では、男性が24.3%、女性が75.7%であった。自己決定に関する尺度については、本研究で新たに開発することとし、新たな文献研究を行い、岡田が以前に開発したものを改良して作成した。自己決定に関する項目は7項目で、受動的意思決定(2項目)と能動的意思決定(5項目)の2つの下位概念項目から成り立つ。この自己決定に関する尺度項目についての妥当性を確認するために、3名の施設長にレビューを依頼した。その結果、適切なものであると判断された。信頼性については、内的一貫性を示すクロンバッハのα係数を算出した。その結果、受動的意思決定と能動的意思決定のα係数は、それぞれ、0.68、0.75であり、尺度全体では0.69であった。これらは中程度のα係数ではあるが、ある程度の信頼性があると判断した。基本属性や生活満足度については、既存の尺度を活用した。意志決定(自己決定尺度)と人生満足度との関係を見るために、その2変数間の相関を見た結果、能動的意思決定と人生満足度との間に5%水準の有意な関連が見られた。従って、能動的な意思決定や積極的な自己決定する在宅虚弱高齢者は、そうでない在宅虚弱高齢者より人生満足度が高い傾向にあることがわかった。従って、援助専門職者は、従来より提案されている自己決定の原則を尊重するとともに、その虚弱高齢者個人にあった意思決定のスタイルをアセスメントし、意思決定プロセスの支援を行っていくことが重要である。
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