大学病院の高度救命救急センターにおいてフィールド調査を行っている。特に、救急医療の医師が東京消防庁の指令室からホットラインを受け、医師はその情報をどのように看護婦や別の科の医師などにその情報を伝達する過程に焦点をあてながら、救急医療活動における情報伝達および情報に基づく意思決定をあきらかにしようとしている。すなわち、救急の医師らは、限られた時間と情報の中で、これから到着する患者を受け入れるのに適切な態勢を組織としてどのように形成し、また患者の到着後、状態の変化にいかに対応しながら処置を遂行するのか、その実践における知識マネジメントを、通話データや録画データの分析に基づき、知識社会学やエスノメソドロジーの観点から明らかにすることを目的としている。 ホットラインにおける指令員と医師との会話データや、医師と看護婦との会話データを収集したところで、その体系的分析を開始している。この分析では、医師が指令員からのどのような情報に基づいて、患者の受け入れや、指令員に対する必要な情報収集の要求、受け入れの際の準備態勢に関わる意思決定を行うのかについて、医師への聞き取りなども行いながら明らかにすることを試みている。今後は、看護婦への聞き取りも行うことによって、看護婦が医師が提供する情報に基づいてどのような意思決定を行うのかについても明らかにしようとしている。さらに、初療室での実際の患者の受け入れに関わる意思決定などについても、すでに収集した録画データなどに基づきながら、引き続き分析を行っていく予定である。
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