国内の青少年向け薬物問題対策は、対象者が全くの未使用者と想定した予防教育が中心である。これらは効率的な対策であるが、青少年の薬物事犯が、特に平成7年以降増加している現状においては、薬物を乱用した場合の効果的な早期介入についても検討され、実践の現場に反映されることが必要であると考えられる。国内には先行研究ならびに実践が殆どみられないため、今年度は米国のNIDA、SAMHSA等の当該問題関連機関から発行されている全資料、および1990年から1999年に米国内で発行された書籍を対象として検索を行い、青少年向け早期介入プログラムについての記載内容の把握と分析を試みた。主要な点は以下の通りである。 青少年の場合、彼らが発達過程の途上にあることから、大人の場合とは異なる治療・援助プログラムが求められる。つまりそれは単に薬物の使用自体を中止させることのみならず、家族関係、交友関係、学業、余暇生活活動等、彼らの生活全般をより健康的なものに変化させていくことをも含む包括的なものである。特にセルフ・エステームを高めることの重要性については、数多くの指摘がなされている。そしてこのような原則の下に、青少年への初期介入は予防教育の一部に位置づけられており、その多くは学校で実施されている。これは、「だめぜったい」形式の予防教育と依存者への治療があるのみで、その中間にあたる対応策が整っていない我が国において、今後参考にされるべき点である。また米国では、喫煙や飲酒は他の薬物乱用と同様の問題と捉えた上で介入の対象とすることが、予防教育の原則として明確に位置づけられている。この点も、アルコールやたばこの他、シンナーすらも「シンナー遊び」というように軽視しされがちな国内の状況とは相違している。この他米国では、青少年への介入と並行して、親に対する多様な援助プログラムが提供されており、その効果が報告されている。
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