女性の多様なライフスタイルやライフコースパターン選択のメカニズムが、社会階層といかなる関連をもつのか、その際に文化資本がどのように作用しているのか、などの問題を検討することを目的とした。そのため、今年度は女性を対象に、社会階層と社会意識・生活価値観に関する調査(サーベイ調査およびインタビュー調査)を実施し、さらに分析のための新たなプログラムや測定尺度の開発を行った。調査によって日常的な生活習慣や価値意識、友人ネットワークの様態を掌握するための簡潔な質問項目の作成を検討した。また、社会階層とライフスタイルをつなぐ概念として、ブルデューらが考察している文化資本の概念を考慮に入れるため、文化的環境や文化的活動についても質問を行った。 概念指標の開発に関しては、性別役割分業観についてこれまで提起されている指標や測度の理論的・方法論的検討を行い、それらの指標間の関連について明らかにした。こうして得た指標で測定した性別役割分業観がいかなる要因によって規定されるのか、また社会意識に対して持つ影響やメカニズムを明らかにした。 またこれと並行して、女性の社会参加と社会階層的要因や家族要因、および価値観との間の関連について明らかにすることを行っている。社会的活動への参加という、家庭の外に活動の場を求める営為については、社会階層との関連がみとめられ、とくに女性本人の高い学歴が社会参加を促進する効果を持つことが確かめられた。
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