本研究の目的は、現代のわが国におけるライフスタイルやライフコースパターン選択の実態を明らかにすることであった。とりわけ、男性と比べて多様なライフスタイルやキャリアパターンをとることになる女性について、ライフスタイルやライフコース、また価値意識がどのように分化しているかを実証的に明らかにすることが主要な課題であった。今年度は調査データの分析を行った結果、以下を明らかにし、これらの成果を発表した。 第一に、家庭内で行われる親子間のコミュニケーションの様態が、親の職業階層によって異なること、また行儀・マナーに対する関心も階層により異なることを明らかにした。幼少時の文化的環境や家庭での経験を通じた階層再生産のメカニズムが示唆される。 第二に、ライフステージに応じて文化的活動への参加状況がどのように変化するかを明らかにした。とくに育児期の女性は社会階層により子供の文化資本の蓄積状況が顕著に異なることを、ライフコースアプローチによって示した。 第三に、価値意識における女性内分化がキャリアプランの差異としてどのように表現されるかを、性役割観に焦点をあてながら明らかにしていった。青年期女性の性役割観は、ライフコース観や結婚観を規定することを構造方程式モデルにより検証した。 またインタビュー調査の結果については別の形で研究報告を行う予定である。
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