ソーシャルワークにおいて広く使われるようになったネットワークという用語は、そのあらゆる局面の実践活動において、とりわけ地域福祉において、その本質や固有性に迫り得る上で有用になるものと注目されてきた^<(1)>。しかし、この用語は非常に多義的に用いられており、これまではそれぞれの用語毎(例えば社会ネットワーク)に論じられてきた経緯がある。そのために異なる用い方の間に何らかの関連性があるのかどうか、あるとすればそれらが全体としてソーシャルワークに持つ意義は何か、及びその関連性を土台にして具体的にどのような介入方法が志向されているのか、という主に三つの点において曖昧さが残っていたと思われる。 まず曖昧さの第一点については、社会福祉援助の中で異なる使い方がされているネットワーク用語群には共通する要素((1)成員の相互作用性、(2)成員の主体性、(3)成員の対等性、(4)成員の多様性、(5)資源交換性、の5要素であり、これらを「ネットワーク性」と総称する)がいくつか存在しているを示した。このことは、様々なネットワークを一体的・総体的に把握することが可能であることを表しているものと思われる。曖昧さの第二点ついては、総体的に把握されたネットワーク、すなわち「総合ネットワーク」という概念を用いることによって、(1)社会福祉援助全体が「ネットワーク性」へ傾斜していっていることが認識できること、(2)社会福祉援助を「ネットワーク性」に近づけていくことを目標に据えて、今後の理論的、実践的な課題を提示し、かつそれらを検討していく可能性を提示できること、以上の2点が意義として示された。曖昧さで残る第三点目については、ソーシャルワークを幾つかの要素からなる構造体として捉えるモデル(社会福祉援助構造モデル)を分析枠組みとして用いた結果、「サービスの対象」という要素において生じている「利用者本人への焦点化」から「関係性全体」への介入を重視する方向転換と、「サービスの源泉」要素における「単独職種・単独組織」ではなく「多職種・多組織」で関与していこうとする方向転換の2つが折り重なった形で描写できることが理解できた。
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