不登校児における昔話の読みの実際を明らかにし、治療方法としての昔話の有効性の検証を行うために、昨年度に引き続き、旭川市内のA小学校の不登校学級に通う児童13名と、対照群としての附属小学校5年生38名の児童に対して読み聞かせを行った。さらに、不登校学級に通う児童の中から2名を抽出し、家庭における読み聞かせに協力してもらった。不登校学級においては11回(H12.4.21〜H13.3.9)、附属小学校においては10回(H12.5.24〜H13.3.7)の読み聞かせを実施した。この間、学級での子どもの様子を記述するとともに、読み聞かせの後、質問紙に回答してもらい、その感想を分析した。 不登校学級に通う子どもたちは、概して、表現することを躊躇し、自分の意見を表明することを嫌う。しかし、昨年度との比較からいうならば、本年度は、面白い話には素直に面白いと反応する変化が見られた。さらに、個人差はあるものの、昨年度に比べると、話の内容に即した感想が書かれてあることを特徴の一つとしてあげることができる。加えて、不登校児についていえば、絵本に対する反応の方が朗読のみよりも良かったことをあげることができる。 これに対し、対照群としての附属小学校の児童の感想は、ダイナミックである。しかも、感想に男女間で違いがあり、男子児童は、話の場面や筋を捉える「状況把握型」の読みを行う傾向があるのに対し、女子児童は登場人物に同化し共感する「人物解釈型」の読みを行う傾向があることが統計的に明らかにされた。 不登校の児童2名を対象にした家庭での読み聞かせは、母親よりもむしろ父親による方が効果が大きいことが予測される。これは、読み聞かせが父子間のコミュニケーションを刺激するためだと考えれる。家庭における読み聞かせは、現在も進行中である。
|