本研究は、生涯学習社会を目指し、音楽を中心として「まちづくり」を推進している地域での、市民参加型の音楽活動を対象とし、そこでの音楽学習の実態や課題について明らかにしようとするものである。「音楽のまちづくり」の事例としては、茨城県日立市の「オペラのまちづくり」と東京都墨田区の「音楽都市構想」を取り上げた。そして、11年度は両地域の実地調査に重点を置き、市民の音楽学習の実態把握を行った。 日立市では市民参加型の創作オペラを平成12年1月16日に初演したが、それらの企画基本方針の資料収集、関係者へのインタビューなどから調査を行った。さらに(1)市民による「ひたちオペラ合唱団」の参加者に対して2度、(2)広報担当のPRチームの参加者、(3)公演当日の来場者、(4)「オペラ制作講座」の受講者を対象として、それぞれにアンケートを実施した。 墨田区では平成12年4月8・9日に9回目の区民参加のオペラを上演する。その公演に向けて、前回公演終了後の参加者の意識調査、それをもとにした今回の公演への方針決定の過程、実際の音楽活動(練習)、その活動過程での参加者へのアンケートなどの調査を行った。また現在は今回の公演当日の来場者ヘアンケートを実施する準備を行っている。 これらの調査から、「市民参加型の音楽活動では、依存的な音楽活動者を形成する危険性があり、その克服が課題となるのではなかろうか」という仮親を設定するに至った。そしてこの克服の過程に市民の学習が大きく関与するため、この点について来年度も調査を中心に研究をすすめることにした。
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