今年度の研究は、首都圏国立私立大学に在籍している14人の中国人留学生とその家族に対する面接調査を中心に行った。調査は、来日後において構築する対人ネットワークがどのようにその適応状況を影響するのかという点に絞って進めた。 調査を通して判明したのは主に次の3点かある。まず、来日初期に比べ、交際する日本人友人の数が次第に少なくなり、また交流を図ろうとする意識も衰えるという傾向が共通に見られた。この傾向は国立大学の私費の大学院生においてより顕著である。 一方、同国の中国人との間は比較的安定した交友関係を保っている傾向がある。同国人の間では同郷人とそうでないものに対する意識の違いは、来日初期段階にあるものの、次第に減少する傾向が見られた。また、悩みなどの相談事は必ずしも同国の同郷人にうちあけることがないようである。 さらに、独身者に比べ、家族で滞在している人の方は日本での生活に対する満足感が高いことがわかった。中でも就学している児童・生徒を抱えているか否かということは、日本人友人の数に影響しているようである。 以上の結果を踏まえ、次年度ては来日の時間的な推移を軸に対人ネットワークをどのように構築しているのかを、さらにシンテンシヴな面接調査および量的調査を通して明らかにしていきたい。
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