本年度はまず、19世紀後半から20世紀前半にかけてのメキシコ教育史に関する文献、史料の調査、収集をおこなった。とくに、メキシコの教育省古文書館、大学の図書館などでおこなった文献調査において、その時代に農村教育の分野で活躍した教育家に関する文献、教育に関する当時の新聞、雑誌、報告書など日本では入手不可能な文献、史料を収集することができた。また、1920年代以降に増大した農村学校、および、農村教師の現職教育と農村地域の生活向上を目的として派遣された専門家集団「文化ミッション」という組織に関して、当時の報告書などを中心に検討し、その具体的な活動内容や果たした役割について論文にまとめ所属機関の紀要に発表した。この論文では、教育省に提出された報告書などを史料としたため、農村での教育活動を担った個々の教師が実際にどのように考え、活動したのか、あるいは、住民が教育活動に対してどのような対応をとったのかなど、国家が推進する農村教育の普及活動の最前線にあった農村教師と住民が、それをめぐってどのように関わっていたのかより具体的なところまでは明らかにすることができなかった。そこで、現在、20世紀前半、農村学校で活動した教師数名によって書かれた回想録を読み進め、必要に応じて翻訳し基礎資料とする作業をおこない、当時の教育活動を実際に担っていた教師たちがどのように感じ、考え、そして活動したのか、あるいは、住民の対応はどのようなものであったのかという視点から検討を継続している。
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