本年度は、構造調整をめぐる援助機関の動向を明らかにするため、世銀から出された報告書、データを収集し、関係者への聞き取り調査を実施した。 構造調整の開始時期は国によって異なるが、構造調整によって各国に課された「調整」の内容はきわめて画一的なものである。それは一言でいえば、「経済活動の諸分野における国家介入の縮小」であり、具体的なプログラムの内容としては、政府支出の削減、公務員の削減、国営企業の効率化や民営化、税制改革などが含まれることが多い。構造調整はほとんどの場合政府支出の削減を伴うものであり、教育予算もそれに応じて削減されている場合が多い。構造調整を受けた国と受けなかった国の教育財政を比較すると、「構造調整を受けた国」の方が教育支出の減少が著しいことがわかる。そして、このような教育予算の削減は、教員数や新校舎建設の抑制、受益者負担の強制などにつながっている。構造調整の基本的な内容そのものは極めて画一的であったが、構造調整の受け入れや実施過程は国によって異なっている。ガーナでは政権内部から構造調整への反対勢力が排除されていたことなどにより比較的導入はスムーズであったが、ザンビアでは、各方面からの反対運動や暴動により、導入の際かなりの困難に直面した。 また、構造調整の受け入れそのものは進んでいる場合でも、具体的な政策実施のレベルでは、世界銀行が意図するようには改革が進まないこともある。構造調整下においても、各国の様々な状況を反映し、教育政策の実施状況は様々である。世界銀行は、初等教育の収益率が高いことから、高等教育支出を削減し、初等教育支出を増やすよう勧めている。しかし、その政策実施は、大学生の反対運動などもあり、思うようには進んでいないことも多い。
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