本年度は、ザンビアにおける教育開発の歴史および現状を中心に検討した。ザンビアでは1964年独立後、ザンビア人に対する教育の普及は政治的にも不可欠となったし、国家建設に要するザンビア人養成も急務であった。そして、独立後は急速な勢いで教育は普及していった。教育政策は「教育を通しての国民意識向上」や「国家統一」という政治的目的に利用され、積極的な教育拡大政策が取られた。1991年のチルバ政権誕生とともに、政府は世銀・IMFの構造調整を受け入れ、経済自由化など構造調整プログラムを開始した。構造調整下では当然、公務員削減も進んだが、教員は対象外であった。1996年には「Educating our Future」という政策文書が出され、さらに基礎教育重視の方針が確認された。そこでは、2005年までに初級・中級基礎教育(1-7年)を完全普及させ、2015年までに上級基礎教育(8-9年)を完全普及させ、高等学校の就学率は50%にすることが目標に掲げられている。また、「Educating our Future」では、教育の自由化、地方分権化、コストシェアリング(受益者負担)といった、構造調整的方針も明確に打ち出されている。その後、教育セクターは、「セクター・プログラム」のもとで教育政策が実施されつつある。「セクター・プログラム」とは、それぞれの援助機関が個々に行っていた援助を分野ごとに束ねて、手続きを標準化することによって効率化を目指そうというものであり、援助の効率化を主目的とするものである。しかし、セクター・プログラムには、複数セクターにまたがる問題(例えば「HIV/AIDS」など)への対応が難しくなるという問題点があることには注意する必要がある。
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