本研究は、学校成果の向上を志向した校長のリーダーシップの組織過程及び児童への影響力と戦略的方法を、量的・質的アプローチを通して解明することを目的としたものである。 報告書は4部構成であり、第I部では、教育的リーダーシップ論と媒介影響モデルの2つの観点から、校長のリーダーシップと児童パフォーマンスとの因果関係を明らかにするための理論的因果モデルを構築し、その検証を試みている。また、ここでは、理論モデルを優先し、データとの適合性を検定する分析技法の限界を指摘した上で、データを優先し、それに最も適合する理論モデルを選択する分析技法の有効性を提示している。 第II部では、校長のリーダーシップの発揮は、教員によって校長がリーダーとして認知されているかどうかによるとの観点から、教員による校長のリーダーシップ認知に影響を及ぼす要因の析出を試みている。また、リーダーとしての認知レベルが高い校長と普通の校長との対比を通して、それが高い校長に特有の知識・技術の析出もあわせて試みている。 第III部では、外部環境要因としての教育委員会(教育長)と保護者・地域住民から、校長や学校組織がどのような影響を受けているのかを明らかにしている。ここでは、特に、学校成果を高めるためには、教育長や保護者・地域住民とどのような関係を構築すればよいかという実践的な課題に対する示唆を提起している。 第IV部では、変革型リーダーとしての校長の戦略的アプローチを記述的・解釈的に分析している。ここでは、校長が組織変革に際して、どのような戦略的方法を採用しているかを、成果の高い学校の質的データの分析を通して明らかにしている。
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