今年度は単行本の収集にかなり集中したことで、主立った書籍はほぼ入手できた。また周辺領域としてビジネス、医療、報道、行政の4分野においても「個人情報」「倫理」に関する文献を収集した。それらの概観によって、以下の知見が得られた。 現在、個人情報及びその保護の重要度は日々高まっている。これは情報処理技術の進展とインターネットの普及により個人情報の収集・解析と集積、検索が国境を越えて〈誰にでも〉容易になったことが大きい。そこで倫理面の議論と対応が進んでいるのが、遺伝情報〈ヒトゲノム〉問題を有する医学界と、個人情報を営利目的で利用しているビジネス界である。その誘因として大きいのは、両者とも被験者や顧客、そして世論の圧力に対応しなくては実験や業務が進まず、また保護対策が進んだライバルに遅れをとるという現実である。 そして研究面でも医療分野は対応が突出している。日本疫学会では調査倫理をめぐって議論を続けている。また厚生省は新薬臨床実験や献血の解析についてインフォームド・コンセントの重要度を高めている。対して人文・社会科学関係では、日本社会学会が学会誌への投稿についてのガイドライン(1999年8月〉にて調査倫理について一項目を設けた段階である。しかし昨年から今年にかけて理工系を含めた学会で次々と概括的ではあるが倫理規定が定められている。日本家族社会学会、日本発達心理学会、日本機械学会、日本化学会などである。営利とは無関係な研究者もまた社会的にそのモラルを問われる時代になってきたのは間違いない。 今後はまず3月中に、各分野ごとの基本資料リスト及び事例集をWWW上で公開し、一般の人々の利用に供することを目標としている。
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