平成11年度は、現在まで東南アジアの現地調査で得られた民族誌的資料の整理・分析作業ならびにアメリカの公文書館等で歴史資料の収集と、フィールドデータと歴史資料との突き合わせと整理・分析を実施した。前者の作業に関しては、特にフィールドで得られたデータのうち、主として文字データを作業補助者の協力も得ながら電子化(コンピューターへ入力)する作業を通年、実施し、平成12年度での非文字資料との統合的整理への予備作業とした。後者に関してはアメリカの公文書館等に所蔵される文献による歴史資(史)料を突き合わせることで、今世紀初頭以降におけるスールー諸島を中心とした東南アジアの海洋民ネットワークの形成過程の分析作業を実施した。この資料収集のためワシントンD.C.の議会図書館等においてスールー諸島及び周辺地域の文献資料の補足的収集を実施し、フィリピン南部スールー諸島および周辺地域へのアメリカ植民地統治政策に関する貴重な一次資料を収集した。これにはモロ州総督ウッド総督らの私信、手紙、日記類を含む植民地統治政策・行政・地誌資料などを含んでいる。こうした資料の分析結果の一部は研究実施者による著作『越境-スールー海域世界から』(岩波書店、一九九九年)のなかでも既に公表した。
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